『継ぎ獅子(つぎじし)』は、愛媛県今治市で毎年春祭りや地元の多くの祭りで演じられる、オリジナリティ溢れる獅子舞です。その歴史は約300年前に遡り、伊勢神宮から「代々神楽」の一団が今治地方を訪れたことに始まります。
一団はこの地で穢れを払い、豊穣を願う「お祓い」を行いました。そして、その際に見せた獅子舞が今治地方に伝わり、「継ぎ獅子」として独自に発展していきました。当初、伊勢では二継ぎであった継ぎ獅子は、今治では神様に少しでも近づくため、また、イネが天まで伸びるほどの五穀豊穣を祈願するために、高く高く継がれ、現在の四段・五段の形式となりました。
継ぎ獅子の実際の演技は非常にアクロバティックで迫力があります。舞い手たちは太鼓や笛の音に合わせて力強く舞い、その途中で獅子頭と胴幕を脱ぎ、さながら組体操のように肩の上に人を次々と乗せていきます。頂点に登る「獅子子(ししこ)」と呼ばれる子供達は、神様から授かった宝物として、当日は地に足をつけさせません。4歳から小学校低学年の子どもが、約5メートルの高さで扇や鈴を持ちながら舞います。そのバランス感覚と体力は見ている人々を圧倒し、息を呑む瞬間が続きます。
もちろん継ぎ獅子は単なる見せ物ではなく、神事であり厄払いの意味が込められています。その力強い動きは地域の平和と繁栄を祈るものです。何よりもチームワークが大切で、氏子の心を一つにして氏神様を奉るものです。
現在では、この伝統は地域の人々によって大切に守られ、親から子へ、子から孫へと受け継がれています。平成12年には愛媛県指定無形民俗文化財に指定されるなど、その歴史と文化的価値は高く評価されています。
観光客の皆さんには、事前に日程と場所と時間を確認しておくことをおすすめします。地元の人々との交流を通じて、この伝統芸能の深い歴史や意味を学ぶことができます。特に、小さな子どもたちが一生懸命に練習し、演技を披露する姿は大きな感動を感じることでしょう。