古くから信仰を集めてきた神社の由緒と、その土地に根付いた文化を紹介。
四国には、弘法大師空海が修行や布教の足跡を残した八十八ヶ所霊場があり、千年以上の時を超えて巡礼の旅が受け継がれています。今治市にも、延命寺、南光坊、泰山寺、仙遊寺、栄福寺、国分寺の六つの札所があり、白衣姿のお遍路さんが行き交う風景は、町の暮らしに静かに溶け込んでいます。
今治には、南北朝時代に南朝方の拠点となり、天皇や皇族と深い縁をもった寺院があります。後醍醐天皇の建武の新政が崩れ、南朝と北朝が対立したこの時代、今治周辺は海陸の要衝として重要視されました。南朝方ゆかりの天皇や皇子が当地を訪れ、その加護を受けた寺院は、軍勢や情報が集まる場となり、その歴史は今も静かに語り継がれています。
中心部に広がる寺町は、江戸時代に今治城下の東側へ集められた寺院群で、長く信仰と文化の拠点として親しまれてきました。昭和20年(1945年)末期の空襲では甚大な被害を受け、多くの伽藍が焼失しましたが、戦後の復興によって再び整備され、現在も由緒ある寺院が町並みに溶け込み、往時の面影を静かに伝えています。
長い歴史の中で幾多の戦いが繰り広げられた今治の地には、越智氏や河野氏、村上水軍、歴代今治藩主など、この地にゆかりある武将や名士たちの菩提を弔う寺院が点在しています。境内に佇む墓碑や供養塔は、静かに往時の物語を伝え、訪れる人に歴史の重みを感じさせます。