「豫中神社(のなかじんじゃ)」は、愛媛県今治市玉川地区に所在し、御祭神として大己貴命(おおなむちのみこと)および少毘古那命(すくなびこなのみこと)が祀られています。この神社は、寿永(1182年~1184年)の頃まで「叶大明神」として信仰を集めていましたが、寿永2年(1183年)、伊予国の城主であった河野四郎通信(かわの みちのぶ)が神社を参拝し、神様からの神秘的な力やメッセージを受け取りました。
その神秘の体験を神主たちに伝え、文治元年(1185年)に河野通信は信仰の厚い神として敬う気持ちを込め、神号である「大明神」に玉川地区の旧称「豫中」を合わせて「豫中大明神」と名付けたと伝えられています。
「大明神」という称号は、日本の神社において特に霊力や神徳が強いとされる神様に与えられるもので、全国的に崇拝の対象となる神々に使われてきました。大明神と称される神々は、地域や国家の守護神として人々に尊敬され、そのご利益や霊験が大きいと信じられています。豫中神社も、この称号が付与されたことで、より広く人々に崇拝される神社となりました。
豫中神社の境内には、大きなイチョウの切り株が残されており、この木は長年にわたり境内を守ってきました。しかし、老朽化が進み、安全上の理由から伐採されました。
豫中神社の本殿の側面には、見事な龍の彫刻が施されています。龍は古代中国から伝わる神聖な存在であり、特に水との深い関係を持つ神として広く信仰されてきました。日本においても、龍は水の神として崇められ、水源の守護や雨乞いの神事において重要な役割を果たしています。神社や寺院においては、龍の彫刻や絵画がよく見られ、水神を祀る場所や雨乞いの神事に関連する神社には、特に多くの龍の装飾が存在します。豫中神社の龍の彫刻も、雨乞いの神事に関連していると考えられます。
また、拝殿には昭和45年(1970年)3月20日に今治市の有形文化財に指定された木造の連歌の書跡が掲げられています。この貴重な文化財は、豫中神社の長い歴史を物語り、地域の文化を後世に伝える重要な遺産です。当時の書芸術や連歌文化の貴重な遺産として保存され、神社を訪れた際には、この歴史的価値に触れることができます。
毎年5月の第2日曜日には、豫中神社で例祭が執り行われ、今治市の無形民俗文化財に指定されている獅子舞が奉納されます。この祭りは、地域の伝統を受け継ぐ重要な行事であり、多くの参拝者が訪れ、盛大に執り行われます。
今治市玉川地区を訪れた際には、ぜひ豫中神社に足を運び、その魅力をじっくりと感じてみてください。